EC2の新しいリザーブドインスタンスのオプションが発表
ウィスキー、シガー、パイプをこよなく愛する大栗です。 本日リザーブドインスタンス(Reserved Instance:RI)に新しい料金体系が発表されました。内容を確認すると注意すべき点があるのでまとめてみました。
2014/12/3 07:40 従来のRI購入が可能である事を追記
本記事で算出しているAWS利用価格は2014/12/3 7:00 JSTの料金表を元に計算しています。
変更内容の概要
オプションの種類
今までのRIは、期間が2種類、使用量が3種類あり、組み合わせで6種類のオプションがありました。
- 1年 軽度使用
- 1年 中度使用
- 1年 重度使用
- 3年 軽度使用
- 3年 中度使用
- 3年 重度使用
これからは、期間が2種類、支払方法に3種類、組み合わせで5種類(3年の場合は支払方法が2種類)のオプションになります。EC2のPrice Listページ(英語)は新体系にアップデートされています。 AWS | Amazon EC2 | Pricing → 右上の[日本語]を[English]に変更
- 1年 No Upfront (前払い無し)
- 1年 Partial Upfront (部分前払い)
- 1年 All Upfront (全前払い)
- 3年 Partial Upfront (部分前払い)
- 3年 All Upfront (全前払い)
従来のRIオプションの購入
Heavy Utilizationを除く旧価格体系は2015年2月2日まで購入できるようですが、今後は新体系に移行していくことになると思います。Heavy Utilizationは購入できませんが、実質的にPartial Upfrontと同等と考えられます。
実際の費用
新オプションの費用
以下の条件の場合で年額のコストを試算してみます。 ※:1年間を8760時間、1ヶ月を730時間で計算しています。
期間 | 1年間 |
リージョン | 東京(ap-northeast-1) |
オペレーティングシステム | Linux/UNIX |
インスタンスタイプ | m3.large |
実際の使用量 | 100% |
試算結果は以下になります。
前払い | 時間単価 | 月単価 | 月利用額 | 年利用額 (前払い含) | 割引率 | ||
オンデマンド | $0 | $0.203 | ー | $148.19 | $1778.28 | - | |
従来オプション | 軽度使用 | $240 | $0.184 | ー | $134.32 | $1851.84 | -4% |
中度使用 | $401 | $0.086 | ー | $62.78 | $1154.36 | 35% | |
重度使用 | $487 | $0.061 | ー | $44.53 | $1021.36 | 43% | |
新オプション | No Upfront | $0 | ー | $97.82 | $97.82 | $1173.84 | 34% |
Partial Upfront | $487 | ー | $44.53 | $44.53 | $1021.36 | 43% | |
All Upfront | $1000 | ー | $0.00 | $0 | $1000.00 | 44% |
※:上記の月単価は1年間(365日)の総時間から算出した平均の月額です。利用額は月の総時間により異なります。(従来の重度使用と同等)
従来オプションと新オプションを比べると、実質的に無意味だった軽度オプションが廃止されて、All Upfrontが導入されたと考えられます。また、Partial UpfrontとAll Upfrontでは1年の場合に年利用額で大きな差が無い様です。
しかし、ここで注意が必要です。No Upfrontは中度使用、Partial Upfrontは、重度使用と同額になっていますが、使用量に関係無く月々の支払が一定になっています。軽度使用や中度使用を購入した上で使用量を下げてコストを抑えていた方は、従来の方法ではコストが下がらなくなるという事です。
例えば、先程の試算条件を以下の様に使用率を50%へ変更して試算します。
期間 | 1年間 |
リージョン | 東京(ap-northeast-1) |
オペレーティングシステム | Linux/UNIX |
インスタンスタイプ | m3.large |
実際の使用量 | 50% |
使用率が50%の場合の試算結果は以下になります。
前払い | 時間単価 | 月単価 | 月利用額 | 年利用額 (前払い含) | 割引率 | ||
オンデマンド | $0 | $0.203 | ー | $74.095 | $889.14 | - | |
従来オプション | 軽度使用 | $240 | $0.184 | ー | $67.16 | $1045.92 | -18% |
中度使用 | $401 | $0.086 | ー | $31.39 | $777.68 | 13% | |
重度使用 | $487 | $0.061 | ー | $44.53 | $1021.36 | -12% | |
新オプション | No Upfront | $0 | ー | $97.82 | $97.82 | $1173.84 | -32% |
Partial Upfront | $487 | ー | $44.53 | $44.53 | $1021.36 | -15% | |
All Upfront | $1000 | ー | $0.00 | $0 | $1000.00 | -12% |
全ての新オプションが従来の重度使用と同様になると言う事です。その為、こまめにインスタンスを停止して利用額を下げる運用はオンデマンドやスポットインスタンスで行う必要があるので、従来のRIを使いこなしてコスト戦略を考えていた場合には変更を迫られます。
キャッシュフローが変わる!
今回大きく変わるのがキャッシュフローです。Partial Upfrontは従来の重度使用と支払い方が変わりませんが、No UpfrontやAll Upfrontは各月の支払額が大きく変わります。
先程と同様に以下の条件で試算を行います。
期間 | 1年間 |
リージョン | 東京(ap-northeast-1) |
オペレーティングシステム | Linux/UNIX |
インスタンスタイプ | m3.large |
実際の使用量 | 100% |
従来オプションでの月々の支払い額が以下の様になります。
新オプションでの月々の支払い額が以下の様になります。
つまり、1ヶ月目の支払いと2ヶ月目以降の支払いに注目します。 No Upfrontでは前払い無しで月々の支払いが安くなります。これはスタートアップ等で大きな資金を一回に集められない場合に有効です。 All Upfrontでは2ヶ月目移行の支払いが無くなります。これは年度末等の駆け込み購入に有効だと考えられます。
さいごに
従来とはRIのオプションが変わりました。新しいオプションを活用して各々にあったコスト戦略を立てて、利用額を下げて行きましょう!